マロン・ザ・ゴールデン

片目のシニア犬”マロン”と保護猫”タマ”の日常生活

マロン、今日は君が旅立つのに、ちょうど良い日だ(1)

マロン、今日は君が旅立つのにちょうど良い日だ

 

マロン、13回目の冬、今日は春一番が訪れた。

 

寒くもなく、暑くもない。そんな穏やかな陽光の中で、君は最後の眠りについた。

 

それまで君は、幾度もの危篤を乗り越えては、ボクの傍らに戻ってきた。

 

ボクも、君が気持ちよく過ごせるように、最後まで最善を尽くしたよ。

 

君が大好きだった日常生活の中で、ふと気づくと、君は静かにひっそりと旅立っていた。ボクが4度目の徹夜を覚悟していた日だった。

 

だから、君が逝ってしまったことに、悲しみは少ない。ただ、君のいない日常生活に、ふとした寂しさを感じるだけだ...

  


マロン、旅立つ前、生前最後の様子【マロン・ザ・ゴールデン】

  

 

マロン、今日は君が旅立つのに良い日だ

 

実を言うと、君の安楽死について獣医師と相談した。もし、このまま寝たきりになったら苦しませずに、眠らせてもらえますかと。本当はボクも怖かったんだ。安楽死は断られたが、君の介護は、ちょうどよくボクを悩ませてくれた。

 

この1ヶ月間、日に3度、必ずトイレに君を担いだよ。眠りについても、君は何度もボクを呼びつけたね。徹夜も三度した。ボクも、肉体的に結構きつかった。ぎっくり腰になりかけたりもした。でも、おそらく君とボクの間で一番濃密な時間を過ごせた。

 

もし君が病気で苦しむ姿を見たら、ボクは、もっと辛い思いをしただろう。そして万一、心の準備が整わないまま、突然病気に君を奪われたら、再び後悔したに違いない。

 

でも、君はゆっくりと静かに、ボクに最後の心の準備をする時間をくれた。ボクのために、よくがんばったね。もうがんばらなくていいよ。天国で、再び大きな瞳を見開いて、思い切り駆け巡ればいい。

 

そして、いろいろ大変だった分、君を見送る悲しみは、ちょうどよく癒え、心の余裕を持つこともできた。

 

マロン、ボクに悲しみを癒やす時間を作ってくれて、ありがとう。


最後まで、飼い主を呼びつけるイヌ【マロン・ザ・ゴールデン】

 

 

マロン、今日は君が旅立つのに良い日だ。

 

君は、健康で元気な仔犬だった。ボクは一目で気に入ったよ。以来、君は病院の世話には、ほとんどならなかった。

 

仔犬のときは、とにかく活発で、組柵をよじ登っては、脱走したね。仔犬のときから脱走の天才だった。ボクが仕事で外出している間に、寝床から逃げ出してロッキング・チェアーに丸くなってボクの匂いを嗅いでいたね。その10月、初めての10キロ散歩に出たとき、途中で歩けなくなって、残りの8kmをボクが抱っこして帰ってきたね。あの頃の君が一番カワイかったよ。

 

でも、君の思春期はスゴかった。すれ違う車を追っかけて山を駆け上がり、そのまま裏山に降りて遭難した。シカを追っかけて登山途中で沢に降りたて助けてもらった。留守番が気に入らなくて、洗濯物を玄関先にまき散らしたりしたね。リードを離した一瞬のスキに車にはねられたこともあった。この時期を無事に乗り切ったおかげで、君は長く生きることができたんだと思う。

 

ボクに怒られると、君はいつも一目散にクレートに逃げこんだ。最初から怒られることは、やらなければいいのに、君はわざと怒られるイタヅラを繰り返すタイプだった。思春期が終わる2歳過ぎまでは、大変だったよ。

 

それからは、君はボクにゴールデンな人生をくれた。温和な性格で、人なつっこく、女の子好きで、ときどき脱走を繰り返した。スーパーの前につないでいたら、「マロンちゃんが、キューピットにきています」なんてスマホに連絡をもらったものだ。ボクは、そのスーパーの中にいたのに。君は、近所のちょっとしたアイドル犬だった。二人で掛け合いをしているのに、車が止まったり、見ず知らずの人から「マロンちゃん」なんて声をかけられたりもした。

 

君には、大変な思いもさせられたよ、だって君は家族だもの。  


ある冬の日の散歩、勝手に交流はじめるゴールデン・リトリーバー【ゴールデン・リトリーバー】

  

 マロン、ボクの人生を面白くしてくれて、ありがとう。